コンサルタント・水谷 梨恵が、日々の業務から思ったことを綴るコラムをお届けします。

職場指導員は新入社員の第一歩を支える役割
弊社は、毎年ある大手の研修会社に「職場指導員」を派遣しています。
この「職場指導員」とは、学校で例えるなら担任の先生のような存在です。期間中に参加する新入社員の成長をサポートする役割を担っています。
この研修にはさまざまな企業の新入社員が集まっており、ここで社会人としてのマナーや、仕事に対する基本的な心構えを学びます。その中で、弊社の職場指導員はただ見守るだけではなく、日々の様子を観察して声をかけたり、必要に応じて指導や助言をしたりと、一人ひとりの成長をサポートするのが仕事です。
研修を受ける方たちは、皆さんそれぞれ異なるバックグラウンドや価値観を持っています。そのため、職場指導員はただ一方的に教えるのではなく、その人の個性を見極めて、どう接するのがいいのかを常に考えながら関わることが重要です。ときには、プライベートの相談を受けることもありますし、こちらからも、ちょっとした変化に気づいて声をかけてあげることで、心を開いてくれるようになります。
新入社員にとってこの1ヶ月弱の研修期間は、社会人として走り出すためにスタート地点で準備体操をし、身体を温めているような状況です。だからこそ、職場指導員は「見守るだけ」ではなく「社会人としての第一歩に寄り添い、しっかりと歩み出せるように支える」役割があると考えています。

新入社員教育に不可欠な「OJT」と「OFF-JT」とは
新入社員教育には、大きく分けて「OJT(On the Job Training)」と「OFF-JT(Off the Job Training)」の2つがあります。
OJTは実際の職場で仕事を通じて学ぶスタイルの教育で、上司や先輩が仕事を教えながら、その中で実践的なスキルや考え方を身につけてもらうものです。一方で、OFF-JTは座学や内・外部での研修を通じて学ぶ場です。
新入社員研修ではいわゆる「OFF-JT」として、社会人としての基礎的なマナーや、報・連・相の重要性、チームでのコミュニケーションの取り方など、実務に入る前に必要な素地を身につけていきます。
私たちはこのOFF-JTの研修を、単なる「知識の詰め込み」で終わらせたくないと考えています。むしろこの時期にこそ、自分で考える力や自律的に動く力のベースをしっかり育てたい。そのような気持ちで職場指導員たちは新人一人ひとりと向き合っています。
また、OFF-JTのメリットとして、仕事のプレッシャーから少し離れ、自分自身と向き合える時間を持てることが挙げられます。OJTが実戦なら、OFF-JTは準備運動。その時間をどう活かすかで、その後の成長に大きな差が出るのです。

新入社員研修に対する「想い」
日本では、新入社員研修が単なる“通過儀礼”になっている企業が多く見受けられます。
それは、健全で生産性の高い組織づくりを目指す上では「もったいない!」と考えるべきです。
将来会社の中核を担っていく新入社員の皆さんが最初に社会に出るこの瞬間こそ、組織の土台を強固にする最も重要なタイミング。ここでどのような環境に身を置き、誰と出会い、どのような経験をするかで、その人の社会人としてのスタートが大きく変わってしまうからです。
だからこそ、私たちは強い想いを持って現場に赴き、奮闘しています。
弊社の指導員は、ただ優しいだけでは務まりません。ときには覚悟を持って厳しいことを伝えるときもあります。ですが、それもすべて「その人のために」という気持ちがあるからです。
研修中に、ある新入社員が悩みながらも自分の課題に向き合い、少しずつ自信を持って行動できるようになっていく姿を見たとき「この仕事をしていて本当に良かった!」と思います。ただのマナー研修ではなく「人生の転機」となるような経験を提供したい。そのような想いで、指導員は毎年研修に取り組んでいます。
スタッフが実際に研修現場で感じることとは
実際の現場に入ってみると、毎年本当にいろいろな発見があります。その中で、私たちがいちばん強く感じるのは「教育は指導者次第で結果が180度変わる」ということです。
同じカリキュラムを受けていても、指導員の関わり方ひとつで、参加者の吸収度合いや意識の変化はまったく違ってきます。「この指導員がいたから頑張れた」と言ってもらえるような存在になれるかどうかは、日々の声かけや観察力、寄り添い方にかかっていると感じます。
新入社員の皆さんも最初は緊張していますが、真摯に寄り添っていると、少しずつ心を開いてくれる瞬間があります。そのときの表情や言葉に、指導員たちはいつも感動させられています。
ある年には、研修中にあまり目立たなかった参加者が、修了後「この1ヶ月で自分を変えられた気がします」と涙ながらに話してくれたことがありました。そのような言葉をもらうとき、指導員はこれまでのどんな苦労も全て吹き飛んでいくのです。
研修は「教える場」であると同時に「学び合う場」でもあります。私たちも毎年、新入社員の皆さんから教わることがたくさんあります。だからこそやりがいを感じられるのです。
このように、弊社の職場指導員は高いプロ意識と強い想いを持ち、新入社員の皆さんと毎日を過ごしています。これまで関わってきた多くのクライアントから「M・Tコンサルティングの指導員なら安心」と言っていただけていることが、私たちにとって最大の褒め言葉です。
新入社員が踏み出す社会人としての第一歩をどう支えるのか。その価値の大きさを胸に刻みながら、私たちはこれからも新人教育に関わっていきたいと思っています。